こんにちは。
今回は、蒸留 設計編の続きの (2) バッチ/連続の決定 について、解説します。
【プロセス設計】
(1) 前提条件の決定 [処理量、フィード・製品組成]
(2) バッチ/連続の決定
(3) 運転圧、温度の決定
(4) 運転還流比、理論段の決定
(5) PFD作成[マテリアル・ヒートバランス作成、制御系設計]
【設備設計】
(6) 棚段塔/充填塔の決定
(7) 塔高さ、インターナルの設計
(8) 塔径の設計
(9) 塔以外の付帯設備の設計[リボイラー、コンデンサー、槽、ポンプなど]
(10) P&ID、プロット図、機器リスト 作成
連続蒸留とは
蒸留以外にも反応、抽出、乾燥などほとんどの化学プロセスには連続プロセスとバッチ(回分)プロセスがあります。まずは連続プロセスについて解説します。
連続プロセスは、プロセスへ一定流量でモノが入って出ていく、つまり常時流れているプロセスを指します。
蒸留で言えば、[入]フィード(原料)、[出]留出,缶出が一定流量で流れているものを連続蒸留塔言います。
化学プラントでは連続蒸留が主流を占めているので、蒸留と言えば連続蒸留を指すことが多いです(もしかすると私の会社だけで、ファインケミカルなどの会社は違うかもしれませんが)。
ですので、これまでのこのブログの記事、例えば以下の階段作図の記事においても連続蒸留を想定して解説しています。
忘れている方、まだ読まれていない方は再度読み返して頂ければと思います。
確かに、一定流量でモノが入って出ていくものとして、計算したり図示したりしていますよね。
連続蒸留の特徴は一度立ち上げて安定化させてしまえば、入と出がバランスして同じ状態で運転できることです。
このように安定した状態を定常状態と言います。
ただし、一度立ち上げて安定化すれば、何もしなくても良いわけではありません。
実際のプラントではフィード条件(流量や組成)や装置の状態が経時的に少しずつ変化したり、気温や天候の影響を受ける場合があるので、各所の分析値を見ながら微調整を行って運転しています。
ということで、連続蒸留のイメージを図にまとめてみました。流量、組成(=温度)ともに変化がないことがわかるかと思います。
バッチ(回分)蒸留とは
バッチプロセスは連続蒸留とは異なり、最初に原料を釜へ仕込み、それを経時的に抜き取っていくプロセスを指します。
バッチ蒸留のイメージは以下の図です。
最初に蒸留塔の下にある釜に原料を仕込んで、熱をかけていき、ある条件で留出/缶出を取り出していくというプロセスです。
上記で解説した連続プロセスとは異なり、一定流量で入ってくるものがないことがわかるかと思います。
バッチ蒸留では釜内および留出の組成(=温度)が経時的に変わり、留出の初流は低沸が多い、後流は低沸が少なくなります。
例えば低沸が目的物質であれば蒸留初期~中期の留出液を取得する、高沸が目的物質であれば蒸留後期の釜液を取得するというような方法ととることになります。
このような方法をとることから、初流→低沸、中流→間の沸点のもの、後流(釜)→高沸というように、複数成分を1塔で分離することも可能です。
バッチ(回分)/連続の決定方法
では、バッチ/連続のどちらを採用するかどのようにして決めたら良いでしょうか。
下表にバッチ/連続の特徴と得意な領域をまとめましたので、この表を見てより適する方を選んでもらうのが良いかと思います。
一方で、一般的な話を簡単に言ってしまうと、蒸留の原料(もしくは蒸留製品)を生産する(使用する)工程が連続かバッチで決めれば良いです。
つまり、バッチで出てくる(使用する)ものはバッチ、連続で出てくる(使用する)ものは連続が良いということですね。※あくまで一般的な話としてですが。
私の経験上も、設備投資の経済性、運転のしやすさなど様々な面を総合的に考えても、ほとんどがこの通りになりました。
終わりに
今回は、バッチ/連続のどちらの蒸留プロセスを採用するかについて解説しました。
前述の通り、蒸留だけでなく、様々なプロセスにバッチ/連続というのがあり、それぞれの特徴に応じて使い分ける必要があります。
例えば、これから市場に投入する新製品で販売量に確度がなかったり、仕様変更の可能性がある場合は、様々な生産条件を取りやすく、設備の稼働/停止をしやすい、バッチの方が良いでしょう。
このように様々な面を考慮しながらどちらのプロセスを採用するか決めていくべきかと思います。