ケミカルエンジニアのTips&Note

化学メーカーで働く中堅エンジニアの技術ブログ。

【ユーティリティ】スチーム温度


今回は化学プラントで熱源としてよく用いられるスチームについての記事です。現在、集中的に解説している蒸留塔の熱源にもよく用いられており、今後の蒸留技術の解説に必須の知識なのでここで取り上げておきたいと思います。

 

 

ユーティリティは非常に重要

 


化学プラントでは反応器や蒸留塔などのメインの設備が重要ですが、それと同じくらい重要なのがユーティリティです。
ユーティリティというのは直接反応などには関与していないが、設備を動かすために必要なもので、具体的にはスチーム(水蒸気)、冷却水、純水、冷媒(冷凍機で冷やされる20℃以下)、熱媒、電気、加圧エアー、加圧窒素などを指します。
これらがないと、化学プラントはまったく動きません。動かないどころか、供給が停止した場合、危険な状態になることもあります。
だから、ユーティリティはメイン設備と同じくらい、いやそれ以上に重要です。
そのため、設備設計時には定常・非定常の両ケースで量・温度・圧力が足りているか、供給が停止したときに対応できるかなどを細かく検討します。


スチームの温度は圧力で決まる

 


今回はこの中のスチームの温度について解説します。スチームはボイラーで燃料を燃やし、水を沸騰させることで得られます。
化学プラントでは様々な温度範囲の熱源が必要な場合があります。その場合、生成するスチームの温度は水を沸騰させる圧力で制御します。
大気圧(0 MPaG)で水を沸騰させた場合は100℃となります。
では、0.1MPaG、1.0MPaGで沸騰させた場合は温度はどうなるでしょうか。
以前の以下の記事を思い出してみてください。

 

 

chemi-eng.hatenablog.com


Antoine式を使用して描ける蒸気圧曲線からわかりますね。以前の記事の蒸気圧曲線の圧力単位がmmHgでしたのでMPaGに変換したものが下図です。
それぞれ約121℃、約184℃で沸騰することがわかります。

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水の蒸気圧曲線

つまり、スチームの温度は供給圧力で決まっています。
0.1MPaGのスチームが供給されているのであれば121℃、1.0MPaGであれば184℃ということです。

ただし、実際は沸点のスチームですと配管で少し放熱があると、すぐに凝縮して水になってしまうため沸点より少し高い温度で供給されている場合が多いです。(このような沸点より高い温度の状態の蒸気をスーパーヒートと言います)
ですが、実用上は上記の飽和蒸気圧と温度の関係からスチーム温度を算出して、全く問題ありません。

 

終わりに

 

今回はユーティリティの重要性、スチームの温度について解説しました。
ユーティリティの能力の検討不足でうまく設備が稼働しないというケースを私も見たことがあります。あなどることなかれ、ユーティリティ。