ケミカルエンジニアのTips&Note

化学メーカーで働く中堅エンジニアの技術ブログ。

【蒸留】導入編① 蒸気圧とは

今日からプラント技術について書いていきます。


まずとりあげるのは、蒸留です。
プラント夜景などが少し前に流行ったので、次のようなプラントの風景を見たことがある人も多いかもしれません。 

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画像引用元;https://www.mes.co.jp/business/infra/plant/detail175.html

 
この中のプラントの象徴ともいえる高くそびえ立っている数本の塔が蒸留を行っている蒸留塔という設備です。
ここで化学物質の分離・精製(要は純度を上げている)を行っています。
蒸留の仕組みや技術のポイントについて今後、何回かにわたって解説していきます。

 

蒸留を理解するためには蒸気圧の理解は欠かせないので、まず蒸気圧とは何かについて考えていきましょう。
理系であれば当然知っているという人もいるかもしれませんが技術は基本が命ですから、割愛することなくやっていきます。


例えば、図のようにコップに水を入れておくと次第に水が蒸発していき、コップの中の水の量が減ること経験的にわかるかと思います。日常ではあまり意識しませんが、この現象は水の分子が運動していて、水分子が液体の中から飛び出そうとしているためです。

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この時、実は次の図のようにコップにきっちりとフタをすると水の分子がぶつかる力がフタとコップにかかっています(室温程度であれば力を感じるほどではありませんが)。これが蒸気圧です。

ちなみに、コップの水を温めると水分子の運動はさらにはげしくなり、蒸気圧が高くなります。さらに温めていくと、やがて蒸気圧が大気圧と等しくなったところで水から気泡が発生します。これが沸騰という現象です。そのときの温度を沸点(水の場合、大気圧だと100℃)といいます。

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分子の運動のしやすさは物質毎には異なります。つまり各物質の蒸気圧は物質毎に固有のものということです。
たとえば、消毒に使用するエタノールは傷口に塗るとすぐ乾くイメージがあるのではないでしょうか。これは水よりエタノールのほうが蒸気圧が高く、蒸発しやすいため実際に速く乾くのです。

蒸留はこの物質毎の蒸気圧の差を利用して、分離を行っている技術です。

ということで、今日は蒸留の導入編として蒸気圧について解説しました。

次回は蒸気圧がどのような数式で表現されるかについて解説します。